あなたは、ロングトーンで10回同じ音を出せるだろうか?
どのフレーズも美しく、響きが損なわれていないだろうか?
吹奏楽に限らず、オーケストラやボーカルなど音楽に携わるすべての者が避けては通れないのが「呼吸法」「ブレスコントロール」の問題だ。
ここをおろそかにする人が、後を絶たないがとんでもない間違いだ。
楽器の悩みの8割はこのブレスコントロールによって解消される。
そもそもこのブレスコントロールは、数日で身につけられるような単純なものではない。
プロでさえ、何度も呼吸法に立ち返る。さらなる効率的なブレスを研究する。スランプに陥った時は、何度もブレスの練習からの積み直しで、コンディションを整えていく。
しかし一方で、呪文のように「ブレストレーニング」と繰り返されても何が重要なのかいまいち認識できないでいる人も多いと思う。
「腹式呼吸」などその最たるものだ。
おそらく音楽をこころざすものでこのフレーズを聞いたことのないものはいないだろう。
吹奏楽のハウツー本でも、おそらくかなりの序盤で登場する項目だ。
なぜ「腹式呼吸」が重要なのか?
「腹式呼吸」が吹奏楽で良いとされている理由
安定的に楽器に息を送り込める。
腹を前面に出すという行為は肩を上に持ち上げるという行為に比べてちょっと無理がある行為だ。だからこそ膨らんだ腹を戻そうとする力がコンスタントに働いて、胸式呼吸より安定した息を送り続けることができる
横隔膜を下げ肺に大量の息を入れるため。
腹部を意図して前に押し出す。すると横隔膜が下がり、肺が下に広がる事で息が取り込まれる
体の上半身がリラックスできる。
お腹の支えで息に「スピード」と「圧力」をかけられる。
人は立っているときは自然と「胸式呼吸」に、寝ているときは「腹式呼吸」になっている。
つまり、そんなに特殊な呼吸法ではないのだ。基本的にあおむけに寝たときは、腹式呼吸に切り替わっている。
ただ、これには大きな落とし穴がある。
お腹だけが膨らむ「なんちゃって腹式呼吸」では、全然ダメ
「わざと」お腹をふくらますという不自然な行為は厳禁だ。これを腹式呼吸だと勘違いしている人が多い。息を吸う時点ですでに上半身に不必要な力が入ってしまっているはずだ。
本物の腹式呼吸は、自然に息が体に戻ってくる。胴全体が膨らみ、胸式呼吸のときとはケタ違いの息が吸えるのだ。
わき腹も背中も息を充満させて、キープする。このときに力が入ってはいけない。
「腹筋で固くする」というよりも、「お腹を張り続ける感じ」だ。
「腹式呼吸」に移行しやすくするコツ
1背中に息を入れるイメージを持つ
2息を吸う時は鼻から
3肩を上下させない
4仰向けに寝転ぶ
5息は「吐いてから吸う」を意識
6息を吸うときは「息が戻ってくる」感覚
広がった腹や胸が元にもどろうという力を利用
7お腹に本を乗せると目で確認できる
8姿勢を良くする(アナウンサーの中では常識)
息の通り道の確保と、圧迫せず体に響かせるため。
9肩が前に出ないようにする
10息は静かにすばやく吸う
吸う時に「ヒッ!」など音がしないようにしよう。胸式呼吸になっているか、息の通り道が狭くなっている可能性がある。
11吸う前に体を折りたたみ限界まで息を吐く
「腹式呼吸」実感ロングトーン
①肺の中にある息を全て出す
②1拍かけて吸う
③7拍かけてロングトーン
④②、③を繰り返し、さらに、音を太く、響きを厚くしていく
<注意すること>
・腹式呼吸で行う
・初めから終わりまで吐く息の量、息のスピードを維持
・できるだけ、のどを開いて多くの息を吸う
・7拍で全ての息を吐ききる
このトレーニングを続けていると自然な状態で息が吸えるようになってくる。
『技巧を駆使していないかのように、演奏が単純で容易に見えるような繊細なテクニックが演奏者には必要だ。』
かの有名なモーツァルトは、こんなセリフを残しています。どんなに、楽譜を真っ黒に埋め尽くしすほどの16分音符や12連符などの連符を目の当たりにしても、演奏者は汗ひとつかかず、「優雅」に音楽を表現せよとのことです。
曲によっては、プロでも、丸一日練習をしなければならないようなものもあると聞きます。
「コンクール至上主義」的な観点から、年度を追うごとにテクニカルな曲がもてはやされてます。
結局はそういう曲芸的な方向でしか「演奏の良し悪し」を表現できませんから、曲の雰囲気というものがどうも二の次になっているような気がします。
吹奏楽コンクールの全国大会で「ロマネスク」の情緒あふれる演奏を披露した学校がいました。透き通るような美しい音色でした。
今やこんな趣向はきっと時代遅れなのでしょう。
ウィーンフィルが超高速「剣の舞」を披露していました。さすがはプロ集団だけあって、あの高速テンポでも音色の美しさは維持し、曲の破綻とまではいきませんでしたが、細部にはほころびが見えました。どうも曲そのものの魅力はそこには無い気がします
「ダフニスとクロエ」や「熊蜂の飛行」も難度の高い技術が求められます。
これらの曲は「指さえ回ればok」というわけではありません。ダフニスとクロエでは鳥の鳴き声、熊蜂の飛行では蜂の羽音を本物そっくりに再現します。ギッシリつまった音符の群れは同時に高い音楽性も求めているのです。
速いパッセージの習得は、地道な練習が一番の近道です。松本孝弘さんもこう言っています。
『早弾きのコツはありません。練習しかありません。』
というわけで、攻略法とまではいきませんが、克服のヒントだけは記しておきます。
①ゆっくり演奏する
落ち着いて楽譜を見てみると半音階の下降、上昇など
意外に普通の組み合わせも多い。
恐れず、100パーセント全ての音符が演奏できるテンポから始めましょう。
②歌ってみよう
よく5連符やら6連符に、5文字、6文字の単語を当てはめて
歌っている練習がありますね。
それ以上の12連符などは分割して6連符と6連符というように
分割して練習してみましょう!
ポイントはメトロノームを鳴らし、一拍の間に、この単語を当てはめるようにしましょう。
「いけぶくろ」「しんさいばし」…
③指を楽器に可能な限り近づける
動きが必要最低限になるよう工夫しましょう。
④指を猫の手のように曲げる。指の腹でベタッと押さえない
⑤連符のフレーズの最後まで息を入れる
速いパッセージになると、体が萎縮して息が入らないケースが多いのです。
⑥一音一音吹こうとしないで、フレーズで吹ききる
細部にクローズアップしすぎると、いざ速いテンポに戻ったときに、脳が違うフレーズと認識してしまうため、うまくいきません。
一つ一つの音符のピッチや音質も意識しつつフレーズで練習しましょう。
⑦意識して指を開いてみましょう
人間の指は、物を握るためにできています。握る方への力はかけやすいのですが、指を開く方の力は意外と弱いのです。
特に中指と薬指の動きが、鈍い人が結構います。
握った状態で、小指から人差し指まで一本づつ広げていく練習をしてみてください。
慣れてきたら高速でやってみましょう。
その時ちゃんと一本一本広げていくように意識してください。
二本の指が同時に動かないように意識するのです。
『10本の指それぞれが、あそこまで完全に独立した生命体として動くピアニストがいただろうか?』と評されたグレン・グールドを目指して頑張ってください。
⑧空いた時間でエアー演奏しよう
指を動かすだけでも、練習になります。