2016/01/09 18:30:37
2016年度課題曲
IV マーチ「クローバー グラウンド」 鹿島 康奨
作曲者からの申し出から急遽差し替えられた例のマーチだ。
冒頭がすべて
言うまでもなく、このマーチの要は冒頭部分だ。この冒頭数小節は、その後にも多大なる影響を与える。重く吹くとマーチの軽快さが消え、冒頭のテンポの乱れは最後までつきまとう。 挽回不可能だ。冒頭で気をつけるべきところは、曲全体で気をつけることであるが練習のポイントは以下のとおり。
- 息を入れすぎないこと。美しく明るい音色で吹こう。
- 休符に敏感になろう。細かい打ち込みが遅れないよう注意。
- 付点のついた音符のニュアンス(音の長さ、スピード感、音の形)を合わせよう。
- フレーズを長く意識しよう。決して一音一音吹いている感覚にならないよう。
- 脱力した透明感のあるフォルテを心がける。
- アクセントとアクセントの付いていない音符との差をつける。
- 山形アクセントは固く音形ハッキリと、松葉型アクセントは「ティーッ」と響きを伸ばすように
- 曲を構造的に捉えよう。「自分と同じ動きをするグループ」と「自分の役割」を知る。
アーティキュレーション(音を切るところ、つなげるところの区別)を的確に吹く
まず、最初にすべきことは無駄な音を消してフレーズをすっきりさせていくことだ。ピッチとリズムを合わせるのはもちろんだが、それよりもテンポを落とし、曲を楽譜通りに丁寧になぞっていくことだ。そのためにはこのアーティキュレーションの確認が欠かせない。
音を切るところは、切っているように聞こえなければならない。
スラーでもないところを適当につなげて吹いている団体のなんと多いことか。 重要なのは、個人任せにしないこと。 指揮者、パートリーダーは面倒くさがらず、全員の音形とフレージングをシャープに磨いていくことを忘れないこと。 録音して比較させると、かなり納得する奏者は多いはずだ。 練習の見える化につながりモチベーションも生まれやすい。 それでもなかなかマーチの軽快さが生まれないときは、管楽器奏者(特にリズムセクション)はパーカッションを注意深く聴くこと。打楽器の音の形、アクセントに管楽器が歩み寄る。そもそもマーチの原形は打楽器を中心とする太鼓のリズムがベースになっている。パーカッションの刻むビートの勢いをお手本にすれば、自然とマーチの軽快さは生まれてくる。
マーチするなら反応の良い発音は必須
演奏が重たくなる原因として発音(タンギング)の不具合が考えられる。本人のスピード感が原因の場合は、メトロノーム片手に強制的に身体にリズムをたたきこむのも一つの方法だ。しかしながら奏者にしてみればそんな単純な問題ではなく「分かっていても自分の息が鳴ってほしいタイミングよりも後で音が鳴ってしまう」という場合がある。これは正直な話、楽器をコントロール出来ていないのが原因だ。楽器の圧力にブレスの圧が負けてしまうと、楽器が十二分にならない。しかしながら乱暴に息を押し込んでも楽器は鳴ってくれない。基本事項ではあるが、結構さまざまなところに関連する問題なのでこの際しっかり練習してほしい。練習のコツとしてはハッキリとした(アクセントのかかっていない)発音を心がけることだ。
音色を犠牲にしない
奏者に一度にあれこれ指示を出すと。音が暗く、固く、響きも粗雑になってしまう事が多い。 初めは確実に吹けるまでテンポを落とせばよい。 コラールや基礎練習(ロングトーン)で吹いている音と違う音色で吹くように心がけよう。 特に多いのが、音を短くシャープにすると、響きが薄く「ペッ」「ファッ」という音色になってしまうことだ。これは、日ごろの基礎練習不足が否めない。おそらくおなかの支えを緩め、息の量を減らしていることが原因だ。当然楽器は十分に鳴らない。このような奏者は、一度レガート奏法での練習をおススメする。レガートで短い音でも響きを失わないような奏法が身に付いてから音形をシャープにする練習に移ろう。響きを失わない、艶やかなスタッカートができるまで練習あるのみだ。
表現を工夫して惹きつけられる演奏に
ダイナミクスや音色を工夫しないと単調な演奏になり、聴いていてもあまり面白くない。
音色を工夫すると、単純な曲でもピリリと刺激の利いたドラマチックな仕上がりにすることは可能だ。「リズム重視の場面」と「歌重視の場面」があり、このメリハリをつけること。
色彩感豊かだが、バランスのとれた演奏に仕上げよう。
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