課題曲選びは慎重に!「好きな曲」よりも「自分たちの良さが伝わる曲」
5つの課題曲のうち、バンドの特性に合った曲を選ぼう。
好きな曲は確かにモチベーションは上がる。何度も繰り返す練習で高い集中力を維持できるのではないか?
そう考える人は多いだろう。
しかし、結果的に、何度も繰り返していくうちに、好きだったフレーズは新鮮味が薄れ、何度練習しても出来ない箇所に憎らしさを覚え、結局本番にはほとんど魅力が残らないことも多い。
逆に、初めはそこまで好きではなかった曲も、数をこなしていくうちに愛着がわき、魅力を発見できることもある。
何が言いたいかというと、どちらを選んでも、結果的にモチベーションに大きな変化はないのだ。
そんなことよりも、注意しなければいけないのが「バランス」だ。
数多の吹奏楽バンドでは、よほど大きな団体以外は構成メンバーが偏っていることがある。
単純に人数だけの問題ではなく、腕の立つ奏者が、トランペットの方に多く、トロンボーンは音が小さめであるなど、木管と金管のバランス、高音と低音のバランス、打楽器とのバランスが非常に多種多様なのだ。
ということは、そのバンドが持つ潜在的なリスクやメリットがそれぞれ違うことも推察できる。
さらに、バンドとして今まで似たような曲を演奏しているかどうかといった要素もある。
曲の選択は、バンドのことをよく知っていなければできないのだ。
冒頭部分は絶対に決めろ!
鉄則中の鉄則
というよりも、冒頭を完璧に決めてからが本当の勝負。
「金賞」か「その他の賞」か、8割がこの瞬間に決まるといっても過言ではない。
できないのなら少数の奏者で吹くファンファーレやソリ、ソロで始まるような曲は避けよう。
自信がないなら、大人数で一斉に吹く雑多な曲にした方が無難。
これは逃げではなく、戦略だ。
勝負をかける場所が違うのだ。
もし、それでも挑戦したいというのなら、徹底的に該当楽器で練習を積み、いくつもの本番を踏ませ、鍛え上げなければならない。
ピッチが透き通るまで、演奏者のリストラをする
厳しいようだが、コンクールに妥協は禁物。
あくまで少数精鋭で行くべき。
この方法は、少なからず奏者の感情をかき乱す。
が、やはりノイズのないクリアなサウンドを目の当たりにしたら、未熟な奏者は納得せざるを得ないのだ。
「このままではいけない」と、強く意識させることが、本人にとってもバンドにとっても大事なのだ。
もちろん、きちんとピッチを合わせられるようになったなら、指揮者やパートリーダーの判断でどんどん演奏者を増やしていこう。万全のサポートと、敗者復活の道は、整えてあげよう。
最悪、本番では1小説だけの演奏でもいいのだ。あせらず、妥協せず問題点の解消につとめよう。
独自性は出さなくてもよい!むしろ弱点を増やす愚行になりえる
独自性を出すのは、標準演奏をマスターしてからの遊びだ。
本来そんなものは必要ない。
独自性を出すのは、初心者でもできるのだ。
そもそもの前提として、曲は楽譜の指示どおりに演奏しなければならない。
確かに楽譜が指示していない部分は、奏者のセンスにゆだねられるが、まったくの自由な演奏を許されているわけではない。
ピッチ、音質、発音などの楽典に基づいた基礎要素が乱れていては、いい音楽とはいえない。
古来、合唱などで、複数の音を重ねた時に、本来聞こえるはずのない高い声がしばしば聞かれる現象が知られており、「天使の声」などと呼ばれて神秘的に語られていたといいます。
現代ではこの現象について科学的な説明ができます。
これは「倍音」と呼ばれるものです。
本来音には様々な周波数の違う音が含まれています。
例えば「ドの音」を鳴らしたとします。
すると鳴らしている「ドの音」以外の音が同時になっているのです。
倍音は、その音によって「含まれる音の種類」や「音の高さ」がバラバラです。楽譜上では同じ音でも楽器によって音色が違うのは、含まれる倍音が異なるからです。規則的に配列されたものは、むしろキーボードなどの人工的な電子音のように感じられるそうです。
例えば、フルートなど、エアリード系の楽器は倍音が少なく「もともとの音」に近い音がします。一方、バイオリンやオーボエは倍音が多く含まれますので、複雑で特徴的な音色が出ます。
楽器を演奏する上でこの「倍音」は非常に重要な役割を持ちます。
それは、人工的に倍音を補強したものがハーモニーだからです。
ハーモニーがピッタリ合うと心地よい響きになるのは、もともとの基音に含まれている音だからです。周波数や音の波がハマる形であれば、お互いの音を邪魔することがないため、自然で美しい響きになるのです。
つまり、キーボードやチューナーなどでプラスマイナスゼロのピッチで調整している演奏者は注意が必要なのです。
これらの機械や鍵盤楽器のピッチは「平均律」という理論をもとにしているからです。
平均律とは、一オクターブの音程を均等に12分割するもので、倍音とは少しズレた音程になっています。この平均律は、鍵盤楽器など単音のピッチをその都度上げ下げしにくい楽器の存在や、移調などがしやすいため、人工的に作り出したものだからです。
そのため、どうしても濁ったハーモニーになりがちです。
平均律は、メロディーを吹くときは厳密に守らなければならないですし、楽器演奏の基本ではあるものの、ハーモニーで合わせるときはあくまで目安です。
倍音を聞きうまくハーモニーに乗っかれるように練習しましょう。
さらに豊かな音色は、豊富な倍音を含んでいるため、自分たちの音色をチェックする目盛にもなります。
事実、倍音を用いて、練習に励むバンドは少なくありません。
「これだけ大勢で吹いているのに、倍音が聞こえていない!」
「高音楽器は、低音楽器の倍音をよく聞いて吹くように!」
このような指示は、吹奏楽の強豪校ではよく耳にします。
倍音を多く含む音を吹くコツは、楽器をよく鳴らすことです。
乱暴に吹くというわけではないのですが、多少のノイズは、ホールでは客席まで届きません。音色に神経質になるあまり、息をおさえてしまうと、「細くて暗い音色」になり倍音も少なくなります。
ホルンのような丸い音は反響板や床など、さまざまな場所に共鳴して出来上がります。
奏者が聴く音と、客席で聴こえる音は若干の差があります。
反響する前の生の音ばかりにこだわってはいけません。
太い音を出すこと。
これをまず心がけてください。
そして、楽器から出る響きを殺さないように、体からムダな力を抜き、共鳴させることを忘れてはいけません。
ちなみに、管楽器意外でも、いかにたくさんの倍音を出せるかということに心血を注ぐ楽器があります。
意外に思われるかもしれませんが、パーカッションなのです。特に、大太鼓や小太鼓、ティンパニなどの打楽器は、中心から倍音が発声する仕組みになっています。そのため中心を叩くと倍音がかき消され、豊かな響きが得られません。ちなみにティンパニはヘッドの半径1/3の部分が最も良い響きが得られるとされています。
倍音が豊かだと、さまざまな周波数が出てピッチも合いやすく、周りの音とよくブレンドします。アンサンブルのレベルを上げるためには必須のポイントなのです。